2015/05/02 02:32

突然ですがみなさん、個人の3Dプリンタで打ち出せるものと聞いて普通に思い浮かぶのって

こういう感じではないでしょうか?本来はなめらかな3Dモデルですが、プリントアウトされたそれは積層で作られるからどうしても積層痕が目立ってしまって、いかにも3Dプリンタで打ち出しましたという感じが強調されてしまいます。しかも、ABSならともかく、普通に使われているPLA樹脂はとっても切削性が悪いから、削ってなめらかにする手法も気軽には使えませんし、一般的な溶剤も使えないから塗装も接着もほとんど不可能です。「はれはれしたプラ素材しか使えない」「削ったり磨いたりといった後加工が困難」「色で仕上げることもできない」という特徴は、結局3Dプリンタの物作りの可能性を狭めてしまっていると思うんです。できあがるものは結局ただのプリントアウトでしかなくて、これらの特長を活かした方向でしか作品制作には活かしづらかった面があると思います。
それを一気に解決して、フツーの3Dプリンタ(FDMでフィラメント選択が自由なタイプ)で、試作品や実用品だけでなく、正しく「作品」が作れるようになるのが「特殊フィラメント」です。

というわけでこんにちは。物作り支援サイトFabCasketのジュンです。わたしたちはi-casketという集団で、様々な物作りのために3Dプリンタを活用しています。その活動で自分たちが必要としたものを調達するようになったのですが、そこで手に入れた特殊なフィラメント(素材)があまりにもおもしろかったので、3Dプリンタで物作りを考えている方々におわけしています。
最近普及の始まった3Dプリンタですが、その素材としてはPLA樹脂やABS樹脂くらいしか一般的ではありませんでした。もちろんそのほかにもナイロン樹脂やチョコレートといったものも打ち出せるとされてはいますけれど、実際にはPLAとABS以外は3Dプリンタを専用設計するか大幅な改造を施さなければ無理な話です。できますよと言われても絵に描いた餅、ぶら下げられたにんじんに過ぎません。でも、去年の終わり頃になって特殊フィラメントが出てきて、突然状況が変わり始めました。
いくつかの会社から出てきているんですが、今回わたしたちが仕入れたのはその走りで、オランダのColorFabb社のフィラメントです。「青銅」「銅」「真鍮」「木材」「竹」「カーボンファイバー」というラインナップで、それぞれは本当に金属や木材を含んでいます。特に金属フィラメントは80%もの含有率で、磨けば塗装ではない本物の金属の輝きが手に入ります。
論より証拠です。こちらをご覧ください

これはわたしたちの3Dプリンタで実際に打ち出して研磨した金属フィラメントのサンプルです。左から、銅、青銅、真鍮です。こんな風に、磨けば積層痕も消え、重くて輝く作品になります。もちろん木材も木材の質感で、竹は竹で、香りまでもその素材そのもの。本物だから当たり前ですが、今までのプラスチック素材オンリーからすればまさに革命です。
わたしたちもこれらを使用した作品や商品を考えていますが、応用範囲はまさに無限大です。ただ、金属とはいっても焼結しているのでなく特殊な樹脂で整列させているだけなので、粘性や弾性などは期待できません。というかほぼありません。輝きや重さ、冷たさなど、造形作品に必要な要素は金属そのものですが、機械的特性はプラスチックに近いという不思議な性質を持っています。

とりあえず自宅のRepRapやReplicatorやatomで打ち出せるといっても、設定が難しいのでは?と思うかもしれませんが、真鍮とカーボンファイバー以外は、PLA樹脂と同じ設定でほとんど問題なく打ち出せてしまいます。そして、切削性は非常に良好です。打ち出し後はさくさく磨けます。
注意する点はノズルの詰まりですが、メンテナンスができている3Dプリンタであれば、ほぼトラブルフリーでした。真鍮とカーボンファイバーについては一筋縄ではいきませんでしたが、それもわたしたち自身でフィラメントを浪費しながら打ち出しに成功するパラメータを詰めました。
せっかくですからと、お買い求め頂いた方に打ち出しのコツをおつけしています。もちろん完全な成功は保証できませんが、皆様の試行錯誤が少しでも減らせれば幸いです。
もう少し詳しい説明を別のブログでも行ってます。よろしければfablog.i-casket.comにもお越しください。

ご興味のある方は是非お試しください。特に真鍮フィラメントbrassFillは、まだ日本ではほとんど取り扱いがありませんので、難しくても他で得られないマテリアルが欲しい方には是非。